ご質問: thanks の品詞と意味が分かりません。
2008 年 12 月 20 日
以下のようなお問い合せがありました。
Q. はじめまして
私は北海道に住んでおりますT.Y.と申します。
VSOP英語研究所が出されておりますKKベストセラーズ「英語力」P81の
I am always in charge of unwelcomed guests thanks to my friendliness to the customers.
という文章の thanks の品詞と意味が分かりません。
辞書では「名詞」か「動詞」となっています。
申し訳ありませんが、ご教示願います。
宜しくお願い申し上げます。
ご質問に対する回答:
T.Y様へ
この場合の thanks は “s”が付いていますから、多分「名詞」と考えられます。
thank の意味は「感謝[する]」なのですが、「出来事の原因を、相手に帰属させる」ということを表しています。有利な出来事の場合に使いますが、不利な出来事の場合にも使います。
ですから、
You have only yourself to thank for this situation.
あなたが持っているのは、唯一、あなた自身が[必ず]感謝(せいに)するように、
[それは]この状況に対して です。
⇒ それは自分のせいだよ。
(Encarta(R) World English Dictionary:MS Bookshelfの例文より)
※ 直訳は、VSOP英文法に従っています。
のように、「悪い出来事」に対しての「非難」の場合にも使います。
これは、日本語でもそうなのですが、「君には感謝するよ」といった時、弾んだ声で言えば、表の意味で「本当に感謝している」のですが、語気を強めたり、気のない様子で言った場合は「お前のせいで~になったんだ。責任取れよ」という裏の意味で使われます。人によっては「弾んだ声で皮肉をいう場合」もありますから、注意が必要です。
thanks と使った場合は、「[複数の]感謝(せい)」なのですが、
thanks to … 全体で、日本語にした時には「~のために」が基本です。
動詞の使い方の場合と同じで、良い意味でも悪い意味でも使うので「~のお陰で」とか「~のせいで」と訳すことになるでしょう。
この例文の中では、叙述語(P)の位置で使っていますから、
前半の I am always in charge of unwelcomed guests というSVO に対して
「[それが]お陰なのは、私の親しみやすさで、[それは]顧客に対しての です」
という「原因・根拠」を表しています。
【質問部分の意訳】⇒ お客の受けがいいので
【考察】
このような使い方は、現行の英文法では「全体で前置詞的に用いられる」と考えられており、同じ「…のために」という意味で使う
- because of …
- due to …
- owing to …
などと同じ使い方をしていると考えられます。
また、同形の使い方としては
- instead of … (~の代りに)、
- according to… (~によれば)
- as for …/as to … (~に関するかぎりでは)
なども考えられます。
現行の英文法に従った考え方する方達は、後ろの to … や of …、for … と組んで考え、
「句前置詞」とか「合成前置詞」
と呼んで、全体で「副詞句になっている」と考えています。
問題は、このような使い方の because や due 、owing という単語自体の品詞を考えた場合です。
現行の英文法の品詞の基準で考えると、
「何の品詞になっているのかがよく分からなくなる」 のです。
これらと同様に、thanks も上手く品詞の分類ができなくなります。
T.Y.様は、「品詞にこだわっていらっしゃる」ご様子なのですが、私が分析してきたところでは、
「英語を、現行の英文法の品詞の定義に従って考えるのは無理がある」のではという結論に至っています。
これがVSOP英文法の出発点なのです。
それは、英語の使い方を調べていくと
「『現行の英文法の品詞の定義』が非常に曖昧で、整合性が取れていない」
ということに気づくからです。
現行の英文法では
「各語の使い方(文中での働き)」によって「品詞名を決定する」
という約束になっていますが、この基本的な約束事が、
実は「文法体系を作る上で本質的な間違えになっている」のではないかと考えています。
特に「副詞」と呼ばれている語群にこの傾向が強いようです。
上記の to … や of …、for … の前で使っている言葉を現行の英文法に従って作られている辞書で調べてみますと、いろいろな品詞になっています。
- thanks は「動詞・名詞・間投詞」
- because は「接続詞」
- due は「形容詞・名詞・副詞」
- instead は「副詞」
さらに、 doing の形で使っているものもあります。ところが
- owing は「形容詞」 となっていますが、
- according は「副 詞」 となっています。
違う品詞になっているのは、他の使い方をしている場合を基準にしているからです。けれども、共に元は動詞で使う言葉で、doing の形(現在分詞形)で使っていると考えられます。
- owe は「借りている、負っている、お陰である」という意味で「自動詞」でも「他動詞」でも使います。
- accord は「調和[する]」という意味で「動詞」でも「名詞」でも使います。
- as は、品詞名が非常に多く「副詞・接続詞・代名詞・前置詞」となっています。
【今の英文法の問題点】
このような品詞の分類は、前述の英文法特有の分類法、
「使い方」で「品詞名を決める」
という約束に従っており、「~詞」というのは、「~詞の使い方を、よくする言葉」という意味を表しています。
つまり、英文法では、「個々の単語に、固有の品詞が決まっている」のではなく、
「~詞[という品詞名の定義に従った使い方]をする言葉」というのが、品詞名の意味なのです。
ですから、一つの語にたくさんの品詞名が与えられるのは「いろいろな使い方をする」ということになります。
このことが、日本人に英語の理解の混乱を引き起こしていると考えています。
日本語文法では
「個々の単語に、固有の品詞が決まっている」
のいうことを元に考えています。
例えば
「動詞は、活用がある言葉で、ウ段の音で言い切りになる」
となり、その語に固有の品詞名があります。
そして、
主語[文節]、述語[文節]、連体修飾語[文節]、連用修飾語[文節]のどの文節ででも使う
となっています。
つまり
「単語の種類」は「品詞名」で表し、「単語の使い方」は「文節名」で表すのです。
意識してない方が多いと思いますが、小学校・中学校で「文法用語」について日本人はこのような刷り込みをされているのです。
ですから、英文法の用語も「同じようになっている」と思い込んで理解しようとするのです。
けれども、英文法の用語は、我々日本人が思い込んでいるものと大きく異なっているのです。
このような英単語の個々の「品詞名」を覚えないと英語が理解できないのだとすれば、多分、英語を理解できる人はほとんどいないでしょう。これが、日本の英語学習の現況ではないかと思っています。
また、これらを覚えきれるように勉強したとすれば、学習期の大半を英語学習に費やさなければならないでしょう。
ですから、多くの英語の達人達が「文法で英語を理解するのは無駄だ。浴びるように読み、浴びるように聞き、理屈を考えずに覚えましょう」とおっしゃるのです。
【VSOP英文法の提案の趣旨】
このような日本の英語学習の混乱した環境を変えようと思い、VSOP英文法を作っています。つまり、「品詞による分類英文法」で英語を解釈するのでなく、
「各語句の文中での働き」に従って理解する方法です。
VSOP英文法の提案している「文中での言葉の働き」は「品詞名」ではありません。
主語(S) 判断語(V) 対象語(O) 叙述語(O) という
「文節名(Phrase の名前)」です。
このように考えて分析してきた結果、
英語も実は、これらの各「文節(Phrase)」に、「いろいろな品詞の言葉」を使っていることが分かったのです。
ですから、「品詞名」で英語を解釈しようとすると混乱するのです。
また、ご質問のような「句前置詞」と呼ばれる使い方の言葉のまとまりは、
「先に漠然とした範囲を言い、その具体的な内容を後ろで説明している」
という英語の基本ロジックからきています。
このことは、講座では説明していますが、既刊書には触れていませんので、分かりにくいと思いますが、よく考えて頂ければ当たり前のことと思えるてくるはずです。
「先に言っている漠然とした範囲」に関して「品詞名にこだわる」と無駄に時間が過ぎていってしまいます。
なぜなら、このような「言葉の使い方」を定義する「品詞名」が、現行の英文法にはないからです。
現在のところの私見では、ご質問に関する thanks とか、 due、owing、because などの言葉は、日本語の「せい」とか「ため」に対応していますので「形式名詞」ではないかと考えています。
もちろん、このような「品詞名の定義」は、現行の英文法にはありません。現行の英文法で「形式名詞」というと、「前記の例とは別の使い方をする言葉」を指します。また、このような考えを発展させていくと、最終的に「品詞の定義」も、全て作り直さなくてはならないとということに気づきます。
けれども、今の段階では「品詞の定義」まで変えて、新しく定義し直された品詞名を使って文法的な説明をすると、ほとんどの方が分からなくなってしまうので、仕方がないので「現行の品詞名」を使って、VSOP英文法の説明をしています。
【結論】
ですから、結論としては、
「品詞名にこだわらず、言葉の意味と働きを考える」ように心掛けることをお勧め致します。
現行の英和辞典等の品詞分類や解説は、英語の理解の妨げになっているのではとも感じています。
この「英文法に於ける品詞の定義」に関しましては、「to-不定詞の3用法分類」について、「品詞で分類するのは無駄だ」ということを解説する無料配布資料を作ってホームページからダウンロードできるようにしました。
http://www.vsop-eg.com/present/
読者の皆さんへの「クリスマス・プレゼント」です。
是非、お楽しみ頂ければと存じます。
VSOP英文法がT.Y.様のお役に立つことを心より願っております。
VSOP英語研究所
西巻 尚樹
※ この回答文の中で使われている「辞書の意味」は、「MS Bookshelf」から引用
しています。

