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◇英語解釈のずれで、あわや大惨事!

旅客機の機長(カナダ人)が使った英語を、管制官(日本人)がずれて解釈したので、乗客数百名の人命が危険にさらされたました。

2007年10月20日、関西空港でのことです。日航機が着陸しようとしている滑走路に、離陸待機中のエアカナダ機が侵入したトラブルがありました。この incident(重大事件に発展する危険性がある付随事件)に対しての「運輸全委員会」の見解を示した記事が2009年2月27日の日経新聞に掲載されていました。

日本人が、現在学んでいる「動詞を中心と考える英語解釈」に「大きな危険が潜んでいる例」として、この時の「管制官(日本人)と機長(カナダ人)との対話」を、VSOP英文法的に解説してみましょう。

運輸安全委員会の報告 2009年2月27日(日経新聞より)

・出来事の概要

2007年10月20日午後6時8分43秒
管制官  :Hold short of runway 24L(24L滑走路の手前で待機せよ)
カナダ機 :滑走路進入許可と勘違い
8分46秒
カナダ機 : To position 24L(24Lに行く) と返答
管制官  :Hold position(現在地を維持する)と聞き違える
9分30秒
カナダ機 :24Lに進入
10分36秒
管制官  :カナダ機の進入に気づき、日航機に着陸のやり直しを指示
日航機  :手前 3.7 km のところで着陸取りやめ

「航空管制用語」が統一されていない?

この新聞記事を読んでいて、「航空管制用語」が英語圏と日本とが異なっているということ自体、トンでもないことだと感じました。

「航空管制用語」は、「 ICAO: International Civil Aviation Organization (国際民間航空機関)基準に合わせる」となっています。

・「滑走路内で待機せよ」の使い方

ICAOでは

” Line Up [And Wait ] Runway [ runway number]”

を使います。

米国のFAA(=Federal Aviation Administration:連邦航空局)では、ICAOと違っており、

Taxi Into Position And Hold [runway number].

を使っています。

ですから、北米ではこの表現が普通に使われているようです。

日本では、ICAO に準拠していますから、 Line Up [And Wait ] Runway を使っています。

この ICAO と FAA の管制用語の違いは、今までに度々問題点と指摘されてきているようです。

それは、管制官とパイロットとの間での用語の解釈の違いによって、これまで Runway Incursion (滑走路への突然の進入という事故)がたくさんあったからです。

TAXI とか HOLD などは、飛行機が地上を移動する時によく使う言葉です。

けれども、ATC(Air Traffic Control:航空交通管制)では、音声がはっきりしないことが多く、例えば、TAXI INTO POSITION AND HOLD のように長い表現の場合、一部分が聞こえなかったりするので、管制官とパイロットとの間で、正確な意思疎通がうまくいかないことが起きる可能性があります。

これが、今回の incident の原因になっていますが、問題はそれだけではないようです。

どうして、日本人の管制官が聞き間違えたか?

一番の問題は、日本人管制官がカナダ人パイロットの言った応答を聞き間違えたというところです。

この間違えは「英語に対する日本人の誤解が原因ではないか」と言えるような部分があるような気がします。

前述のように「滑走路に入る」は、北米では ” taxi [in]to position” と言っています。

たとえ日本では “Line up”  と言っているとしても、管制官はこの北米の表現を知っているはずです。

それにもかかわらず、カナダ人パイロットが  ” taxi to position” で「滑走路に入る」と言うところを、 taxi  を省略して ”to position” と言ったのを、音声状況が悪く、日本人管制官が “Hold position” と聞き違えたのです。

to が「~へ行く」という意味を表している。

日本では、 I go to the office.  を「会社に行く」と覚えますから、「行く」の英語は  go  だと多くの人が思っています。

けれども、英語の中では、go は「動いていく」という漠然とした意味しか表しておらず、 「~へ行く」という具体的な意味は  to  が表していると考えられます。

このことは、当会発行の「Get The Real…英語参考書」の Chapter3 で詳しく説明しています。

http://www.vsop-eg.com/publish/bk-sankosho.php

ですから、I drive to the office.  I walk to the office.  I fly to the office. でも、「事務所に[~という動作の様子で]行く」という意味になります。

このことは、前回のブログに「他動詞の使い方」の例として、I’ll take you to the station.  という例文を使って述べました。

http://www.vsop-eg.com/archives/301

ですから、

当然、I will taxi to the office this morning.

のように言っても「タクシーで会社に行く」という意味で通じなくはありません。

日本でも「タクる」という言い方があります。

ただ、普通は「 take a taxi  to 場所 」という言い方になります。それは、taxi  は「自分でする行為ではなく、移動手段として『取る』もの」だからです。

ところが、航空用語では

The plane is taxiing to the end of Runway 24.

のように使って「その飛行機は24番滑走路の端に移動しています」のような意味になります。

to が「~へ行く」という意味を表して、 taxi が「[乗客を乗せて]地上を車輪で動いている」という「行く時の様子」を表しているからです。

ですから、 taxi to position は「[離陸に際しての所定の]位置に『タクシーのようにして』行く」という意味なのです。

ところが、日本人管制官は、 to が「~へ行く」とあまり意識 していないので、音声状況の悪さも手伝って、勝手に”Hold position” だと思い込んだのだと思われます。

英語は、

to  という前置詞が「行く」という意味を表しており、

taxi を動詞として使った場合、「行く時の様子を表している」

と理解しておくことは、日本人にとってとても重要なことであると感じます。

動詞中心に意味を作っているのではなく、前置詞を中心に意味を作っているのです。

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トラブル後、カナダ航空当局は国際民間航空機関(ICAO)の勧告に従い「LINE UP」を滑走路内に入る用語に改めたそうです。

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