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VSOP英語研究所ブログ

オバマ大統領就任式での名(迷)場面

先日のアメリカの大統領就任式で、オバマ氏が宣誓する際、最高裁長官が
オバマ氏の宣誓を混乱をさせてしまいました。
宣誓文の中の、faithfully という言葉の位置を変えて言ってしまったのです。

faithfully のような言葉(副詞)は、位置によって働きが変わりますから、
意味も変わります。

大統領就任式

皆さんも、1月20日のオバマ氏の大統領就任式をご覧になったと思います。

大変感動的なもので、我々日本人のおかれている政治環境から見ると、羨望を覚えたのは事実です。
ところで、大統領就任の正式な宣誓の言葉は、合衆国憲法第2条第1項第8号に定められており、以下のようになっています。

Before he enter on the Execution of his Office, he shall take the following Oath or Affirmation:

“I do solemnly swear (or affirm) that I will faithfully execute the office of President of the United States, and will to the best of my ability, preserve, protect and defend the Constitution of the United States.”
⇒ 私が[本当にする]謹厳に誓うのは、それをで、[それは]私が忠実に遂行しようと思っているのは、大統領の職責で、[それは]合衆国のです。そして、心掛けていくのは、私の最善の能力で、維持し、保護し、そして守ります、[それは]合衆国の憲法をです。

そして、最近のしきたりとして、so help me God と最後に付け加えるようになっています。.

就任式の際、この宣誓の介添えし大統領就任を取り仕切る立会人が、Chief justice of the Supreme Court(最高裁長官)で、今回はJohn Roberts(ジョン・ロバーツ)氏でした。

因みにchief of justiceを「司法長官」としている資料がありますが、英語圏では「司法長官」はAttorney Generalと言い、行政府(大統領府)の中の役職(大臣)です。
三権分立ですから、大統領就任を執行するのは、司法権を持つChief justice of the Supreme Court(最高裁長官)で、司法長官は大統領が任命します。

このロバーツ)氏が、立ち会って大統領就任式が行われました。

事の顛末

以下が、その出来事の流れです。

ROBERTS:  Are you prepared to take the oath, Senator?
OBAMA:    I am.
ROBERTS:  I, Barack Hussein Obama…
OBAMA:    I, Barack–
ROBERTS:  …do solemnly swear…
OBAMA:    I, Barack Hussein Obama, do solemnly swear…
ROBERTS:  …that I will execute the office of president to the United States faithfully
OBAMA:    …that I will execute… [pause]
ROBERTS:  …faithfully the office of president of the United States…
OBAMA:    …the office of president of the United States faithfully
ROBERTS:  …and will, to best of my ability…
OBAMA:    …and will to best of my ability…
ROBERTS:  …preserve, protect and defend the Constitution of the United States.
OBAMA:    …preserve, protect and defend the Constitution of the United States.
ROBERTS:  So help you God?
OBAMA:    So help me God.
ROBERTS:  Congratulations, Mr. President.

―CNNより―

ここで、オバマ氏は自分が覚えていた宣誓文と違うことをロバーツ氏が言ったので、戸惑いながら、宣誓が終ったようです。
式の時は、皆その事情があまりよく分からなかったのですが、録音を後から聞いて、「宣誓を間違えたから、大統領になっていない」と言い出す人が出てきたそうです。
ですから、もう一度21日にホワイトハウスのMap Roomでやり直したそうです。

問題は、faithfully の位置を間違えたために「大統領になっていない」と言い出す人が居たことです。

何故、問題となったのか?

「宣誓文は、憲法に定められた文言」ですから、正確に言わなければ権限が発生しないのは当然なのですが、なぜ、このような言葉尻を捉えたような事でもめたのでしょうか。

それは、副詞は位置を変えると「意味が変わってしまう」からです。

日本では、一般に、「英語の副詞の位置は比較的自由」とか
「副詞の文中の位置はできるだけ動詞の前に置くのが望ましい」
のように言われて、「副詞の位置による意味の変化」についてあまり説明されていません。

ところが、実は、faithfully のような副詞と呼ばれる言葉は、位置によって同じ言葉でも意味が変わるのです。

それは、「英語は言葉の位置、言葉の働きを決めている言葉」だからです。

VSOP英文法的に言うと

判断語(V)(一般的には「動詞」と呼ばれている)の
・前なら、「話し手の判断」で
・後ろなら「具体的な叙述」です。

手元の辞書をみると

【faithfully】
Ⅰ 忠実に, 誠実に; 貞節に.
Ⅱ 正確に.
Ⅲ 固く, はっきり
promise faithfully 固く約束する.
deal faithfully with…
(1) …を誠実に扱う.
(2) …をきつく扱う, …を厳しくしかる.
New College English-Japanese Dictionary, 6th edition (C) Kenkyusha Ltd. 1967,1994,1998
というように書かれています。

ここで意味がⅠ.Ⅱ.Ⅲ.と3つ書かれていますが、Ⅲは、ⅠとⅡと趣が違う意味なのに気づかれるでしょう。

皆さんも、「-ly で終わる副詞」の意味を辞書で調べているとき、このように「趣の違う意味」が書かれているに気づかれている方も多いでしょう。

これは、「-ly で終わる副詞」が「位置によって意味が変わる」からなのです。

その基準が
判断語(V)(一般的には「動詞」と呼ばれている)の
・前なら、 「話し手の判断」で
・後ろなら 「具体的な叙述」
なのです。

ですから、

I will faithfully execute the office of President to the United States
と言えば、
⇒ 私が忠実に遂行するのは、合衆国大統領の職責です。
ですが、
I will execute the office of President to the United States faithfully.
⇒私が遂行するは、合衆国大統領の職責で、[それは]きちんとした忠実な様子です。

というような「様子や態度を表す具体的な意味」になってしまいます。

ですから、憲法条文に従って言い直さなくてはいけなくなるのです。

副詞は、使う位置に制限がある

「位置による言葉の働き違い」により、副詞は使える場所に制限があります。
例えば、probably(たぶん)、really(本当は)は「文全体を修飾する副詞」となっており、文頭か中位で使います。文尾では原則使えません。

always(いつも) も文末はダメです。

それは「具体的な意味」を表さない言葉だからです。

….. , really? のように一旦文を切って付け足す時には使います。

これは、英語は、
先に「既に相手が分かっている情報(既知情報)に対しての、話し手の判断を先に言い」
後から、その情報を主題にして、「相手に伝えたい叙述(新情報)を言う」という
語順になっているからです。

同じ副詞でも位置によって意味が変わる

例えば、Naturally は

「当然、もちろん」というような「話し手の判断的な意味」とともに
「自然な様子で、自然に」というような「具体的な意味」も表せます。
ですから、文中のいろいろなところで使うことになります。

そして、もちろん位置によって意味が変わります。

★文頭 ⇒ 話し手の判断だけを一語で表現

Naturally, Iwas required to pay all costs of repair.
もちろん(当然)、私が支払を要求されたのは、全ての費用で、[それは]修理のです。
Naturally I was not very pleased with the account.
もちろん(当然)、私があまり嬉しくなかったのは、その請求書と一緒になってです。

★中位=判断語(V)の間:V1 +[Mid]+V2  ⇒ 補助的な話しての判断

I was naturally required to pay all costs of repair.
私が、当然支払を要求されたのは、全ての費用で、[それは]修理のです。
I was naturally not very pleased with the account.
私が、当然あまり嬉しくなかったのは、その請求書と一緒になってです。
The update is naturally required for the members to see these improvements.
このアップデートが当然要求されるのは、その会員に向かって、[それは]この改善を見るために です。
This will naturally require a lot of work and a bit of time.
これが当然要求するのは、たくさんの仕事と少しの時間です。
Most tropical plants do not naturally grow in soil but in organic debris, such as leaf litter. They prefer an aerated compost.
ほとんどの熱帯の植物が、当たり前に生長しているのは、[いわゆる]土壌の中ではなく、しかし[その反対なのですが]、有機物の堆積の中で[成長しているのです]、[それは]例えば、[落ち] 葉のクズ[の山]のようなものを指します。

中位:[Mid] はとても重要な言葉の位置:補助的な判断を表す

この「中位:[mid-position] 」という英文の中の位置は、VSOP英文法の「判断語:[ V1+V2 ] 」の間のことです。
今の英文法では、「be動詞の後ろ、[一般]動詞の前」と説明されている位置です。
このような説明だと、「何故、中位と呼ぶのか」がよく分からないので、あまりきちんと触れていません。
けれども、VSOP英文法では、この位置は、英語を理解する上でとても重要だと考えています。

・判断語(V)の直後 ⇒ 判断の対象内容(対象語)を表す

Tomo is now dancing much more naturally than before.
トモが今踊っているのは、ずっとより自然な状態で、[それは]以前よりです。
“Certainly,” my boss answered, smiling quite naturally. ” I will come and see Mr. Watanuki at four o’clock tomorrow afternoon.
「確かに」、上司は答え、笑いながらだったのは、とても自然な様子で、[そして]「私が言ってみるつもりなのは、綿貫さんのところへ、[それは]4時に、[それは]明日の午後のです」[と言った]

・文末=対象語の後ろ ⇒ SVOに対しての叙述を表す(具体的な内容)

Life cycles and economy grow together naturally.
生活の循環と経済が成長するのは、一緒にで、[それは]自然にです。
Most plants grow in soil naturally.
ほとんどの植物が生長するのは、土壌で、[それは]自然にです。]

そして、after all という言葉も、
「結局」の意味で使う時は He did come back after all. (結局帰って来た)のように文末で用いる. after all を文頭に用いると, たとえば After all, he did come back. は「とにかく帰って来ることは帰って来たんだから, まあいいじゃないか」という意味になる。(New College English-Japanese Dictionary,より)

これも、理由は同じで、文のまっ先に言う言葉は「既に起きていること(前の文脈)に対する話し手の判断」で、
後ろで言う時は、その前で自分が言った文の内容全体に対する「叙述」になるからです。

位置が違えば意味も違う

一般的には、「文中における副詞の位置はかなり自由で、はっきりと決められるものではない」と言われています。
また「原則によらない用法に出合っても柔軟に理解しましょう」とも言われていますが、そんなことはないのです。

★ 英語は語順で意味を決めている言葉です。

「判断語(V)を中心に考えると、使う目的(意味)によって位置がはっきり決まっている」
のです。

我々日本人が「副詞は、どこでもよい」と思ってしまっているのは、今の英文法がこのことをきちんと説明していないからだけなのです。

・S-V と、先に抽象的な判断を言い
・O-P と、その後ろで具体的な内容を言う
という、VSOP英文法的な語順規則で考えると、
なぜ意味が変わるのかも分かるのです。

このことは、「英語力―世界初 熟語が分かる英語教科書(KKベストセラーズ)」で詳説しています。

追記

なお、ジョン・ロバーツ氏は、ブッシュ元大統領が、2005年にChief Justice of the United States(最高裁長官)に指名しました。その際、アメリカ上院は、78-22でブッシュ氏の案を可決しましたが、ロバーツ氏の指名承認に反対票を投じた22人の民主党議員の中にオバマ氏の名前が入っています。
以下はアメリカの上院での採決記録です。

http://www.senate.gov/legislative/LIS/roll_call_lists/roll_call_vote_cfm.cfm?congress=109&session=1&vote=00245

この事実を考えると、もしや・・・と勘ぐる人もいるという話です。

追記 2

この原稿を書いている時は、faithfully の方に気を取られていて気が付かなかったのですが、メルマガ【VSOP通信】をご購読の読者の方から、早速貴重なご意見を頂きました。

S.S.様より

>ご無沙汰しております。
>とても、いいポイントですね。
>実は、faithfullyの位置のほかに
>前置詞(ofのところを、to)
>も間違っています。

>ROBERTS:  …that I will execute the office of president to the United States faithfully
>OBAMA:    …that I will execute… [pause]
>ROBERTS:  …faithfully the office of president of the United States…

先導者のROBERTS氏の言い間違えに影響を受けず、きちんと諳んじているオバマ氏に底知れない力を感じます

このような前置詞の使い方は日本人はなかなか身に付かないのですが、教養あるネイティブ・スピーカーでも間違えるのを見るとホッとします。

そして、このようなところまで意識が届く、S.S.様の鋭い観察眼にも敬服したしました。

どうも有り難うございました。

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